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横浜地方裁判所 昭和41年(わ)458号 判決 1966年12月10日

本店

水海道市三坂町一三五二番地

被告

日本産業株式会社

右代表者代表取締役

和田三郎

本籍と住居

藤沢市藤沢九七番地

会社役員

被告人

和田三郎

明治四一年一〇月二〇日生

主文

被告日本産業株式会社を罰金六〇〇万円に処する。

被告人和田三郎を懲役六月に処する。

ただし五年間懲役の執行を猶予し、同被告人を保護観察に付する。

理由

(罪となるべき事実)

被告日本産業株式会社は、本店が水海道市三坂町一三五二番地にあつて、資本金一、〇〇〇万円(全額払込済)、砂や砂利の生産(採取)販売を営業としており、被告人和田三郎は、同会社の代表取締役であつて、同会社の業務全般を統括している。被告人和田三郎は昭和四〇年法律三四号によつて改正された以前の法人税法一八条一項による、法人税額等の申告に当り、同会社の業務に関し、同会社の昭和三八年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における所得及び法人税の申告として、所得金額を一、〇三三万四、八九八円、法人税額を三五三万三、〇二〇円と記載した所得金額及び法人税額確定申告書を、昭和三九年三月二日頃、下館市上八町下館税務署長に提出した。

しかし、これは内容虚偽の過少申告であつた。即ち、同会社の右年度における真実の所得金額は五、一二〇万八、八八五円であり、法人税額は一、九〇、六万〇五一〇円であつたのであつて、それをことさらに架空支入れ、架空利息支払、架空現場費、架空自動車修理費、架空燃料費などの計上や、車両売却利益計上洩れ、雑収入計上洩れなど、虚偽に基き所得金額を減少させて計算したためであつた。このように被告人和田三郎は、被告会社の業務に関し、会社の法人税として、真実の税額から申告の税額を差し引いた差額、一、五五二万七、四九〇円を、不正行為により免れた。

(証拠)

一、登記官浅野嘉明作成、被告会社登記簿謄本

一、被告人和田三郎作成、下館税務署長あて、所得金額及び法人税額確定申告書謄本の写し

一、高久徳子の収税官吏内津昌喜に対する昭和三九年七月二七日づけ質問てん末書

一、高久徳子の検察官に対する供述調書

一、公判における証人茅野栄之助の証言

一、茅野栄之助の検察官に対する供述調書

一、竹内浩一の検察官に対する供述調書

一、押収した、被告会社備えつけ、総勘定元帳(二冊)、同補助簿、金銭出納帳(昭和四一年押三〇七号の一、二、三、六)

一、収税官吏白石利行あて、小島正五郎、中村義一、石井好治、星三夫、佐藤喜一、二見梅治、金子勇、斎藤四郎、各作成の答申書

一、関東信越国税局調査々察部査察課発、小島砂利店、渡辺商店、山田砂利店、佐々木商店、加藤建材店、金子英雄にそれぞれあてた返戻封書

一、茅野栄之助の収税官吏白石利行に対する昭和三九年七月二〇日づけ、二二日づけ、両答申書

一、押収した被告会社備えつけ仕入帳、経費明細帳、仕入請求領収書綴(前同押号の四、五、九)

一、押収した、被告会社備えつけ、現場修繕費請求領収書綴(前同押号の一一)

一、押収した、被告会社備えつけ、自動車修繕費請求領収書綴(前同押号の一〇)

一、押収した、被告会社備えつけ、燃料費請求領収書綴(前同押号の一三)

一、茅野栄之助の収税官吏田中和夫あて、昭和三九年七月一七日づけ「供述書」

一、茅野栄之助の収税官吏白石利行あて、昭和三九年九月四日づけ「答申書」

一、押収した被告会社備えつけ、固定資産台帳、車両売却台帳、自動車関係書類(前同押号の七、一四、一五)

一、押収した、被告会社備えつけ、自動車タイヤー請求領収書綴(前同押号の一二)

一、押収した、被告会社備えつけ、交際費内訳明細綴(前同押号の八)

一、収税官吏高橋直治、同青木潤、両名共同作成、被告会社に関する「芝信用金庫田村町支店調査関係書類」

一、芝信用金庫田村町支店次長新垣澄夫作成、収税官吏高橋直治あて、「答申書」及び「証明書」

一、収税官吏白石利行、同樋口利雄、両名共同作成、被告会社に関する「駿河銀行平塚(支)店調査関係書類」

一、右両名共同作成、被告会社に関する「横浜銀行平塚(支)店調査関係書類」

一、収税官吏白石利行作成、被告会社に関する「平塚市農業協同組合調査関係書類」

一、柿沢篤太郎の収税官吏清水寅男に対する昭和三九年七月二日づけ、三日づけ、同白石利行に対する同年八月二五日づけ、各質問てん末書

一、柿沢篤太郎の検察官に対する供述調書

一、茅野栄之助作成、収税官吏白石利行あて、昭和三九年一〇月一〇日づけ、二一日づけ、同年七月二七日づけ、各答申書

一、平塚信用金庫営業部長上原一郎作成、収税官吏清水寅男あて「答申書」

一、収税官吏山崎重之作成、被告会社に関する「平塚信用金庫本店調査関係書類」

一、全公判における被告人和田三郎の供述

一、被告人和田三郎の検察官に対する供述調書三種

一、被告人和田三郎の収税官吏に対する質問てん末書八通

一、被告人和田三郎作成、収税官吏白石利行あて、昭和三九年九月九日づけ、同年一〇月一〇日づけ、両答申書

一、被告人和田三郎作成、収税官吏樋口利雄あて、昭和三九年一〇月一〇日づけ答申書二通

(法令の適用)

被告人和田三郎の行為は、昭和四〇年法律三四号法人税法付則一九条により、右法律でもつて改正された以前の法人税法四八条一項に該当し、懲役と罰金の併科を相当としないが、所定刑中懲役をえらび、その刑期の範囲内で同被告人を懲役六月に処することとする。ただし、情状にかんがみ、刑法二五条一項一号、同条の二、一項前段に基ずき、この判決が確定する日から五年間刑の執行を猶予することとした上、同被告人を、猶予の期間中保護観察に付することとする。

被告日本産業株式会社に対しては、同会社代表者和田三郎が同会社の業務に関して前記法人税法四八条一項の違反行為をした場合にあたるので、同法五一条一項に則り、右四八条一項所定の罰金刑を科することとなるところ、被告人和田三郎の免れた法人税額が五〇〇万円をこえる場合であるので、情状にかんがみ、右法人税法四八条二項を適用し、その所定金額の範囲内で被告会社を罰金六〇〇万円に処することとする。

なお、刑事訴訟法一八一条一項ただし書により、訴訟費用を被告人らに負担させないこととする。

公判出席検察官 杉原弘泰

(裁判官 高橋雄一)

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